おたふくワクチン(流行性耳下腺炎ワクチン)の接種に関して

 

 「おたふくワクチンを接種した方が良いですか?」と聞かれることがあります。

おたふく(流行性耳下腺炎)は罹患しても「耳下腺が腫脹して痛くて、熱が出て学校を休まなくてならない病気」と認識されている方が多いかもしれません。しかし、実は恐い合併症がいくつかあります、その一つが難聴です。少なくない確率で耳が聞こえなくなることがあるのです。今でも難聴はまれと思われがちですが、最近は聴力の検査が行われるようになって実は多いことが分かってきました。

以前は髄膜炎などおたふくワクチンの副作用のみ注目されており日本では定期接種になっておりません。海外では殆どの国で定期接種になっている基本的な予防接種です。

 おたふくの髄膜炎に関しては おたふくワクチンを打つと過去の統計では1200人に1人くらいの確率で髄膜炎になりました。これは約0.08%で決して低い確率とは言えませんが、自然に感染すれば3%が髄膜炎になるので、それでも有効と考えられます。また、この1200人に1人は結構昔の統計でMMRワクチンという麻疹・風疹ワクチンと一緒に接種していた時代の数字なので、最近の新しいワクチンはもっと少なくて1/31/10300012000人に1人と言われています(補足しておくと、一緒に打たなくなって副作用が減ったのではなくて、ワクチンそのものが改善されました)。もちろん、希ですがワクチンでショック、血小板減少性紫斑病、難聴、精巣炎といった副作用があります。

 世の中にはワクチン接種で病気になるくらいなら、ワクチンをしないと言う方もいます。しかし、副作用と効果を考えればあきらかに接種をした方が子供のためです。また、ワクチン無しで発症してしまった場合、他の友達にうつしたら嫌な思いをするかもしれません。また、両親が仕事をしている場合はどちらかが仕事を休んで看病しなくてはなりません。場合によっては入院するなどということを考えられます。このため任意接種でお金がかかってもワクチンを接種した方が良いと思います。

 

 基本的に一歳を過ぎて麻疹・風疹のワクチンを接種するときに同時におたふくワクチンを接種した方が良いです。麻疹・風疹ワクチンを接種した方も接種から28日以上経っていれば速やかに接種するべきです。

 

診療中に「おたふくワクチンを接種しましょう」と説明すると、「接種しない方が良いと聞きました」と答えるお母さんがおります。

 

 「髄膜炎になるから辞めた方が良い」と言う勉強不足の医師がいるようです。20年前のワクチンは確かに髄膜炎が多く発生しました。このため、この考え方が絶対に間違っているとは言えませんでしたが、現在ではワクチンも改良されており科学的に理論の通っていない理由ですので接種した方が良いです。日本小児科学会、日本医師会でも全てのこども達が接種できるように活動しています。もちろん、理由も詳しく説明されています。接種しない方が良いという医師は、なんにも医学的知識を勉強していないのです。

 

他の理由で「おたふくワクチンをすると完全な免疫が得られないから、やめた方が良い」と言う勉強不足な医師がいるようです。

 

ワクチンで一生の免疫が得られないことがあるのは良く知られています。良い例が麻疹(はしか)です。ワクチンをしていたのに罹患してしまったことが問題になって数年前に新聞報道もされました。しかし、麻疹の問題は日本では過去にワクチンを1回しか接種しなかったために起こったことで、海外では以前から麻疹ワクチンは2回として全員接種として解決していました。つまり、日本は長年1回しか公費での摂取ができずに、しかも定期接種とは言っても摂取率が低いために起きた悲劇です。

事実、日本以外の多くの国で麻疹は2回接種であり麻疹の発生は見られず。日本人が海外に麻疹を持ちだして問題になったこともあります。最近になりようやく日本も麻疹は2回接種になりました。

 おたふくに関しては1回接種で多くの方はワクチンを接種すれば免疫がつきます。免疫がついた方は、おたふくから免れますし、仮に感染してしまったとしても、髄膜炎や難聴などの合併症からは逃れられます。

 以下の2つのパターンを考えればどちらがよいか分かります。

 

1)   仮に、ワクチンを接種しなければ、日本ではおたふくの流行が見られますから、いずれおたふくになるでしょう。たしかに完全な免疫が得られますが。一部の方は合併症で髄膜炎になったり、聴力を失ったりします。

 

 2)ワクチンを接種した場合、多くの方はおたふくになりません。一部の方は免疫が得られなかったり、免疫が弱かったりします。これらの方がおたふくウイルスをもらうと、多くの人は症状が出ないで軽く感染を起こして完全な免疫が得られます。そして、一部は、おたふくになります。しかし、ワクチンにより軽症で済みます。

 

 以上の1)と2)を比較して1)が良いという人はいないと思います。もし、心配であれば海外のように、おたふくワクチンも2回接種すればより確実です(海外では2回接種をしています。日本小児科学会では麻疹同様に小学校入学前に2回目の接種を推奨しており、2回接種すればさらに安全です。)。

 

現時点で科学的には接種した方が良いワクチンです。おたふくワクチンは日本以外の経済的豊かな国は定期接種になっています。

 最近になっても「おたふくワクチンを接種しない方が良い」と言っている先生には受診しない方が安全です(先に書きましたように昔はワクチンによる髄膜炎が問題になり接種を控えた先生もおりますが、最近でも控えているのであれば、その先生の不勉強です。もしくは、ワクチンより感染して受診した方が儲かるからと考えているのかも知れません)。

 おたふくワクチンをしない方が良いという先生とは議論しても仕方ないので別の施設でワクチンをしましょう。

 

なお、接種時期としては1歳を過ぎたらなるべく早く接種したほうがよいです。

1回目を接種していても、5-6歳で2回目の接種をすることを日本小児科学会では推奨しています。

 

ひきた小児科クリニック 電話0277-44-3040

 

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